キャダストルの情報と不動産登記制度の連繋◆佐藤義人

<<目次>> まえおき キャダストルの意義 キャダストルの組織の概要 キャダストルの情報 コンピュータによるキャダストルの文字情報 マイクロフィッシュによるキャダストルの文字情報 紙を素材とするキャダストルの文字情報 普通地籍図 特別地籍図 地籍図の調製と修正 市町村役場の キャダストルに関する情報 不動産登記カードボックスと不動産登記カード キャダストルの情報と不動産登記カードボックスの 一致 キャダストルの法的使命 まとめに	キャダストルの意義 　フランスのキャダストルは、その有する情報的意義　intérét informatique　のほか、さらにつぎの四つの意義、すなわち、歴史的意義　intérét historique、法律的意義　intérét juridique、税務的意義　intérét fiscal　および技術的意義　intérét technique　についても学ばせてくれます。 　歴史的意義は、時代とその場所　époques et les lieux　の要請に応じ変化を遂げてきたキャダストルが、歴史と国の慣習　histoire et les coutumes d'un pays　を明らかにしてくれるというところにあり、法律的意義は、キャダストルが土地所有権の証明　preuve du droit de propriété　のための重要な用具であるという点です。 　土地の所有は、必ず譲渡と分割の問題　problémes de transmission et de partage　をともないます。したがって個人別の土地所有の記述　description des possessions de chaque individu　と、各土地の境界の識別　connaissance des limites　は、個人にとって重要な関心事となります。 　税務的意義は、キャダストルが地方直接税　fiscalité directe locale　の公正な課税のための重要な用具であるという点です。地租の賦課　répartition des impôts fonciers のために、キャダストルでは土地の現況の記述とその評価の一覧表　état descriptif et évaluatif des sols　が作製されます。 　技術的意義は、航空写真測量技術およびコンピュータ技術の発展と相まって、キャダストルにおける地形測量の分野　domaine de la topométrie　と地籍図の調製　confection du plan cadastral　の分野に大きな進歩もたらしてきているという点です。 　このような意義を有するキャダストルの制度に関し、フランス国民はどのように認識しているのでしょうか。ステファンラヴィーニュ先生は、『フランスのキャダストル』の冒頭において、 « Peu d'institutions sont à la fois aussi proches et aussi lointaines des Français que le cadastre.»「キャダストルほどフランス人にとって身近であると同時に遠い制度はない。」と述べ、下記の四つの理由を挙げてそれを説明しています。 ➀　フランスにおける土地所有の甚だしい拡大により、不動産の取得行為　acquisition d'un bien immobilier　の一環として、あるいは、土地の境界に関する隣人との紛争　conflit avec son voisin sur les limites de propriété　の際において、キャダストルの情報　documentation cadastrale　を参照してこざるをえなかったし、またこれからも参照してゆかざるをえないこと。 ➁　きわめて高い価値　valeur trés chère　を有し、また、法律によって神聖化された　sacralisée par le droit　土地の所有権　droit de propriété　を、キャダストルが明らかにしてくれること。 ➂　キャダストルが、事実上　pratiquement、　いかなる国どんな時代　continent et le siécle　においても、常に人々の生活の一部　partie de la vie des homes　をなしてきたこと。 ④ キャダストルが、多くの人々　majorité de la population　にとって、一定区域の土地　territoire　の、高低　relief　や植栽　vegetation　の表現なしの、平面測量による人為的区分をなす地籍図　plan cadastral à un découpage planimétrique　につきるものであること（STÉPHANE LAVIGNE『LE CADASTRE DE LA FRANCE』３頁参照）。 　すなわちステファンラヴィーニュ先生は、キャダストルがフランス国民にとって、身近な存在あることの理由として上記➀、➁、➂を、遠い存在の制度であることの理由として上記④をあげているのです。このように見てくると、一面において、わが国の不動産登記制度と相通ずるところがあるように思われます。
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